【環監向け】レジオネラ症対策・営業者の姿勢、施設と保健所との信頼関係

【環監の視点】
レジオネラ症対策の根本にあるのは、営業者の考え方・姿勢と、施設と保健所との信頼関係だと思っています。
利用者の命・健康をまもるため、衛生管理を重視する営業者の考え方・姿勢が、従業員に伝わり、施設全体の動きにもつながっていきます。

こんにちは。元文京区文京保健所・環境衛生監視員で、『レジオネラ症対策のてびき』著(倉文明監修、一般財団法人日本環境衛生センター)、レジオネラ症対策・避難所衛生対策の研修講師をしている「オフィス環監未来塾」中臣昌広です。

2024(令和6)年8月下旬、第28回環監未来塾私塾・講演会をオンライン開催しました。

テーマは、「公衆浴場等のレジオネラ症対策、年2回換水の老舗旅館の生まれ変わった姿」です。

講師は、株式会社お風呂のシンドー 代表取締役の新道欣也氏です。

全国の保健所・環境衛生監視員、保健師等、20名の皆様が参加しました。

参加者の感想では、「源泉掛け流しであってもレジオネラの発生源となることがわかった」「報道では聞けなかった事情を知ることができた」を聞きました。

今回の内容は、レジオネラ症対策に有用ですので、ご講演から、私が理解した内容をご紹介します。

以前に掲載した別ページに、今回の内容に関連して「浴槽水の換水頻度を考える」内容の詳細がありますので、そちらもご活用ください。

【年2回から毎日換水へ】

メディアで報道された内容でいちばん驚いたのは、1年間に2回しか浴槽水の換水がされていなかったことです。

保健所の行政検査では、37,000 CFU/100mL が検出されました。

報道された旅館では、大浴場の男女浴槽が各約12m3とのことです。計約24m3です。

報道されたころ、浴槽への温泉補給水量は、1日あたり100m3といわれています。

補給水が1日あたり浴槽の約4倍量になると計算できます。

にもかかわらず、菌発生の現状があったということです。

このことは、浴槽の清掃や配管の洗浄などを実施しないと、浴槽を中心に多量のレジオネラ属菌が増殖してしまうことを意味しています。

レジオネラ症対策のため、浴槽水の適切な換水、定期的な浴槽・配管等の洗浄、浴槽水の消毒など、衛生管理の必要性がわかります。

新道氏の話によると、再生した旅館では、現在、毎日換水、毎日浴槽清掃、週に2回の源泉配管の洗浄が実施されています。

【条例の換水規定】

自治体により、条例の内容は異なります。

・文京区公衆浴場法施行条例

「浴槽は、毎日完全に換水し、清掃すること」

・福岡県公衆浴場法施行条例

「浴槽水は、一日に一回以上完全に換水すること。ただし、連日使用型循環浴槽(集毛器、消毒装置及びろ過器のいずれをも備えた浴槽に限る。)を使用する場合にあっては、一週間に一回以上完全に換水することをもって足りる」

福岡県の条例では、循環ろ過の浴槽水は7日に1回以上の換水が求められています。

【営業者の姿勢】

ご講演のなかで、問題発覚時に支配人で、のちに社長になった営業者の話が動画を通して紹介されました。

過去の非を認めて、失敗を繰り返さない内容の言葉がありました。

施設・会社のリーダーの考え方、姿勢が、レジオネラ症対策すべてに影響しているのが、今回の事例からわかります。

レジオネラ症対策の根幹は、営業者の考え方、姿勢にあると言っていいでしょう。

【従業員の知識・スキルの習得】

新道氏は、施設再生のために、衛生管理の指導だけではなく、従業員の人材育成にも携わりました。
 
当初、従業員は、温泉について詳しい知識を持っていなかったようです。

新道氏が講師として、浴室や機械室などでの現場で、従業員のかたに双方向のやりとりで質問をしながら、解説をしていきました。

写真から、従業員が真剣に話を聞きいる姿が見えました。
  
問題発覚後に辞めた従業員のかたが多数いて、残った従業員のかたたちが、自分たちが頑張っていくしかないと強い意識があったと、新道氏から聞きました。

現場の研修会では、メモを熱心にとる姿が印象的だったといいます。

レジオネラ症対策には、従業員1人ひとりの知識・スキルの習得が大きな力になることが伝わってきました。

【情報開示】

生まれ変わった施設で、利用者に対して、印象的な情報開示が二つあります。

①残留塩素濃度の表示

受付付近に、消毒の残留塩素濃度の測定値を記した貼り紙がありました。

こうした情報開示を、以前に見たことがあります。

22年前に7人の死亡事故を起こし、そのあと再生した宮崎県・日向サンパーク温泉施設です。

フロントの上に、浴槽別に残留塩素濃度のデジタル表示がされていました。

利用客に安心感を与える行動だと思います。

②清掃動画の映像

脱衣場にモニターを置き、浴室・浴槽の清掃作業の動画を流しています。

生まれ変わったいまの姿を、利用者に伝えています。

【信頼関係の構築】

問題発覚は、地域のイメージを下げることにもなりました。

地域住民との信頼関係の回復のためのイベントを開催しました。

地域との交流のための観月会です。

旅館の高級料理が、一品500円で提供されました。

【環監の視点】

レジオネラ症対策の根本にあるのは、営業者の考え方・姿勢と、施設と保健所との信頼関係だと思っています。

利用者の命・健康をまもるため、衛生管理を重視する営業者の考え方・姿勢が、従業員に伝わり、施設全体の動きにもつながっていきます。

施設と保健所の信頼関係は、営業者・従業員と保健所・環境衛生監視員との信頼関係です。

レジオネラ症対策を進めるには、営業者・従業員と環境衛生監視員との協力がなければ成り立たないと考えています。

レジオネラ症対策のご質問、ご相談など、お気軽にお問い合わせください

レジオネラ症対策の講師ご依頼につきまして、お気軽にお問い合わせください

【ご案内】

【2024(令和6)年度講座】

2024(令和6)年度のオフィス環監未来塾の講座一覧表をご覧いただけます。

『レジオネラ症対策のてびき』の概要はこちらから確認できます。ご購入をお考えのかたも、こちらから注文ができます。

・環監業務の悩み、課題がありましたら、ご相談をお受けしています。

・課題の解決につながる講座をご用意しています。

・保健師の皆様への研修のご相談、避難所の衛生対策活動等のご相談をお受けしています。

月に数回、環監のための、レジオネラ症対策、防災、仕事術、講座情報など、最新情報をメールで真っ先にお届けします。ご希望される場合、こちらにご記入ください。

所属(必須)

職種(必須)

自治体名(任意)

担当者名(必須)

メールアドレス(必須)

【実績】

(書籍)

・2022年、厚生労働省のレジオネラ対策のページに掲載されている「入浴施設の衛生管理の手引き(令和4年5月13日)」の作成ワーキンググループのメンバーに、国立感染症研究所・倉文明先生らと共になっています。

・2013年、『レジオネラ症対策のてびき』倉文明監修(一般財団法人日本環境衛生センター)を出版しました。

(活動)

・2017年、広島県三原市の公衆浴場施設で起きたレジオネラ症集団感染事例において、現地の三原市で次のとおりご協力しました。


 ①行政の対応強化(職員研修会の開催、対策指針・対策事業の提案など)
 ②管内施設の衛生管理徹底(レジオネラ症対策講習会の開催、講習会後の個別相談など)
 ③事故発生施設への対応(現地調査・事故の原因究明の協力、改善方法の検討など)

(講師)

・2024年、宮崎県・宮崎市、施設向け令和6年度レジオネラ属菌汚染防止対策講習会「公衆浴場・旅館・ホテル・福祉施設・医療施設等の入浴設備の衛生管理」の講師をつとめました。

・2024年、(公財)青森県生活衛生営業指導センター、公衆浴場・旅館・ホテル等施設向けレジオネラ症発生予防対策研修会「レジオネラ症対策の基礎知識と入浴施設の衛生管理の方法」の講師をつとめました。

・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度・環境衛生監視指導研修で「環境衛生監視指導の実際、公衆浴場のレジオネラ症対策」(オンライン)の講師をつとめました。

・2021年、高知県、令和3年度入浴施設におけるレジオネラ属菌汚染防止対策講習会・環境衛生監視員を対象とした現場研修会「循環式浴槽立入検査の実際について」の講師をつとめました。

Follow me!