【環監・保健師入門】感染症対策・鳥インフルエンザを知る

【環監の視点】
2023年11月上旬、つくば市で開催された第82回日本公衆衛生学会総会に出席しました。
感染症の専門家の講演で印象に残ったのは、「残念ながら、次のパンデミックは必ず来る」です。5年以内にパンデミックの可能性があるという話もありました。
新型コロナの教訓を活かし、新型インフルエンザ流行時に環監として何ができるのかを考えておく必要があるでしょう。

感染予防のマスク(イメージ写真)

こんにちは。元文京区文京保健所・環境衛生監視員(環監)で、レジオネラ症対策・避難所衛生対策の研修講師をしている「オフィス環監未来塾」中臣昌広です。

2023(令和5)年12月上旬、オンラインで開催された、かながわ疫学勉強会「初歩から学ぶ 感染症の危機管理 ~リスク評価・リスク管理・リスクコミュニケーションの課題~」に参加しました。

講師は、吉川泰弘氏(岡山理科大学獣医学部長)です。

全国から、保健師、試験検査担当、食品衛生監視員など30人以上のかたが参加しました。

ご講演後の質疑応答で、私から「次のパンデミックで、鳥インフルエンザが脅威に見えるのですが」と質問したところ、吉川氏から次のような主旨のお話がありました。

・鳥インフルエンザが言われて、半世紀以上になる。

・鶏へのワクチン接種がフランスで開始された。

・豚が鳥と人との間に入り、鳥から豚へ、人から豚へ、両方の感染が起こる。

・人に順化すると、感染拡大につながる。

・先を読む必要がある。

吉川氏の話をうけて私は、鳥インフルエンザについて調べてみました。

ご活用ください。

【千代田区で野鳥から検出】

2023(令和5)年11月28日に、東京都千代田区で回収された野鳥の高病原性鳥インフルエンザ疑い事例の発生がありました。

環境省・東京都から同時に発表されました。
発表資料はこちら https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/nature/animals_plants/birds/bird_flu_report.files/231201_toriinnhuruennza01.pdf

検査の流れは、次のとおりです。

①簡易検査

②A型鳥インフルエンザウイルスに特有の遺伝子であるM遺伝子を確認するためのLAMP法による遺伝子検査

③ウイルスの血清亜型(H5またはH7亜型)の検出や病原性を判定するリアルタイムPCR法等による遺伝子検査

③で確定されたあとの対応は次のとおりです。

環境省が指定した野鳥監視重点区域(当該死亡野鳥が回収された場所を中心とする半径10km 圏内)において、野鳥の監視を強化する。

前述の事例は、同年12月1日に実施した遺伝子検査で高病原性鳥インフルエンザ(H5亜型)が検出されたと報告がありました。

東京都の対応が発表されました。
発表資料はこちら https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2023/12/04/documents/13_01.pdf

【野鳥が死んでいたときの取り扱い】

環境省が作成した「野鳥における高病原性鳥インフルエンザに係る対応技術マニュアル」(2023(令和5)年8月改定、同年11月一部修正)があります。

対応レベルにより、死亡野鳥調査の内容が変わります。

対応レベルは、1~3があります。

対応レベル1:高病原性鳥インフルエンザの発生のない通常時

対応レベル2:国内単一箇所発生時

対応レベル3:国内複数箇所発生時

たとえば、対応レベル1では、死亡野鳥のウイルス保有状況が調査されるのは次のとおりです。

・マガン、コハクチョウ、オシドリなど:1羽以上

・マガモ、オオワシ、フクロウなど::3羽以上

・カルガモ、ハシボソカラス、ハシブトカラスなど:5羽以上

・ハト:5羽以上
(野鳥監視重点区域の場合、3羽以上の死亡がみられた場合の他、感染確認鳥類の近くで死亡していたなど、感染が疑われる状況があったときには1羽でも検査対象とすると記述されています)

上記の羽数について、マニュアルの説明の主旨は次のとおりです。

同一場所(見渡せる範囲程度を目安とする)で数日間(おおむね3日間程度)に発見された死亡個体や衰弱個体の合計羽数が該当するとき、ウイルスの保有状況の調査が実施されます。

ただし、死亡原因が他の要因であるものは除かれます。

【鳥インフルエンザから新型インフルエンザへ】

内閣官房の新型インフルエンザ等対策のホームページや厚生労働省のホームページには、鳥インフルエンザについての記述があります。

A型インフルエンザウイルスの、H5N1亜型やH7N9亜型という鳥インフルエンザウイルスがヒトに感染して重篤な症状を起こす例が過去に報告されています。

鳥ウイルスによるパンデミックのリスクが懸念されています。

ウイルスは変異して、鳥に感染するタイプが、他の動物にも感染するようになることがあります。

鳥から人への感染が繰り返されると、人の体内でウイルスが増えることができるように変異し、人から人へ容易に感染する可能性が出てきます。

人と鳥のインフルエンザウイルスが豚のなかで合体することがあるといわれ、新型インフルエンザウイルスはこうした経緯で発生するだろうと考えられています。

【新型インフルエンザの被害想定】

新型インフルエンザが発生すれば、ほとんどの人が免疫をもっていないので、急速な感染拡大となる可能性があります。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と同様に、都市の人口集中、飛行機の交通機関の発達による人の容易な国際間の移動などにより、短期間で世界中にまん延することが考えられます。

国の被害想定は、次のとおりです。

感染者:人口の1/4である3,200万人が感染

受診者:最大で2,500万人

入院患者:53~200万人

死亡者:17~64万人

新型インフルエンザのワクチンについては、発生後にウイルスをもとに製造が開始されます。

発生してからワクチン完成まで、おおよそ半年から1年かかるとされています。

新型コロナワクチンのように、予想以上に早く完成する可能性はあるかもしれません。

子どもを中心に感染拡大が起きるといわれ、厳しい行動制限の可能性があるかもしれません。

【公衆衛生学会で専門家の意見】

2023年11月上旬、つくば市で開催された第82回日本公衆衛生学会総会に出席しました。

感染症の専門家の意見をいくつか聞きました。

印象に残ったのは、「残念ながら、次のパンデミックは必ず来る」です。

5年以内にパンデミックの可能性があるという話もありました。

いま鳥インフルエンザは、豚への感染が起きている段階だということです。

海外の感染症動向に細心の注意を払う必要があるでしょう。

【環監の視点】

上記のとおり、2023年11月上旬、つくば市で開催された第82回日本公衆衛生学会総会に出席しました。

感染症の専門家の講演で印象に残ったのは、「残念ながら、次のパンデミックは必ず来る」です。

5年以内にパンデミックの可能性があるという話もありました。

新型コロナの教訓を活かし、新型インフルエンザ流行時に環監として何ができるのかを考えておく必要があるでしょう。

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・2022年、厚生労働省のレジオネラ対策のページに掲載される「入浴施設の衛生管理の手引き(令和4年5月13日)」の作成ワーキンググループのメンバーに、国立感染症研究所・倉文明先生らと共になっています。

・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度・環境衛生監視指導研修で「環境衛生監視指導の実際、公衆浴場のレジオネラ症対策」(オンライン)の講師をつとめました。

・2021年、高知県、令和3年度入浴施設におけるレジオネラ属菌汚染防止対策講習会・環境衛生監視員を対象とした現場研修会「循環式浴槽立入検査の実際について」の講師をつとめました。

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