【環監・保健師入門】レジオネラ症対策・展望風呂のリスクはあるのか?
【環監の視点】
配管が長い場合のリスクを下げる方法
①全配管の毎日排水
②24時間循環・通常運転
こんにちは。元文京区文京保健所・環境衛生監視員で、レジオネラ症対策・避難所衛生対策の研修講師をしている「オフィス環監未来塾」中臣昌広です。
2023(令和5)年7月なかば、レジオネラ症対策オンライン講座を開催しました。
全国・保健所環境衛生監視員8名のかたが参加されました。
受講者の感想では、「公衆浴場設備を説明する動画視聴があり、わかりやすかった」「1年目でもわかりやすい内容でした」と声をいただきました。
講座終了後、受講者のかたから質問があり、回答しました。
環監業務に有益な内容ですので、ご紹介します。
また、2023(令和5)年9月なかば、私が企画構成しました第10回保健所環境衛生監視員講座(主催:一般財団法人日本環境衛生センター、オンライン)が半日開催されました。
全国の保健所・環境衛生監視員62名のかたが参加されました。
テーマは、公衆浴場等のレジオネラ症対策で、私がファシリテーターをつとめました。
講義のなかに、「広島県三原市温泉事故」(講師:三原市総務部秘書課 寺本大地氏)がありました。
2017(平成29)年3月に起きた、公衆浴場施設のレジオネラ症集団感染事例です。
患者数58名、うち1名のかたが亡くなられました。
当時、私は、施設の調査、事故の原因究明、管内施設への講習会講師、職員研修会講師など、3回にわたり現地へ行き、三原市にご協力しました。
三原市の施設は、4階にある展望風呂でした。
展望風呂に関係して、環境衛生監視員講座での質問、私からの回答もご参考までに、ご紹介します。
【展望風呂のリスクはあるのか?】
(質問)
景観風呂はどのようにレジオネラのリスクがあるのでしょうか?
(回答)
景観風呂(展望風呂)の構造的な最大の特徴は、1階や地下階の原水槽や機械室からの配管が長いということです。
長い配管は、大きな表面積をもっています。
配管中に滞留水が繰り返しできる場合、管に付着する温泉成分があれば、その部分が微生物の堆積場所となる可能性があり、レジオネラ属菌検出のリスクがあると考えられます。
実際に、三原市の事例では、切り取った配管を見ました。
管が閉塞して、管径が半分以下になっていました。
長い配管を通して、管の閉塞の、成分が堆積した場所は、微生物の温床になっていた可能性があると思いました。
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【除鉄処理】
(質問)
三原市の事例について、配管や濾過器内への鉄分の付着ですが、除鉄除マンガンはしていなかったでしょうか?遊離塩素消毒で析出が強ければ、モノクロラミン消毒だと析出を減らせないでしょうか?
(回答)
源泉の除鉄、除マンガンはしていなかったと記憶しています。
モノクロラミン消毒であれば、別の状態になったのではないかと思います。
湯を抜いた浴槽には、底に赤茶色の鉄成分が残っていました。歩くと、足跡が白くなるくらいでした。
それくらいに、源泉には鉄分が多量にありました。
消毒の塩素剤を加えることで、温泉成分中の鉄が析出しやすくなり、固体化して配管内側に付着していったと考えられます。
そのため、前記のように、管が閉塞したのです。
【管閉塞後の配管洗浄】
(質問)
三原市の事例について、温泉成分で閉塞しかかるような状態からでも、洗浄のみで配管の状態は回復するものなのでしょうか。
(回答)
閉塞した管の状態を見たとき、配管洗浄で対応できるとは想像できませんでした。
実際には、配管洗浄を3回実施して、菌不検出の状態が確認できたと聞いています。
【三原市の報告書】
2019(平成31)年3月に、三原市から「三原市内の公衆浴場施設におけるレジオネラ症集団感染事例報告書」が出されています。
詳細な内容で、環監業務の参考となるものです。
報告書のリンク先は、次のとおりです。
こちら
https://www.city.mihara.hiroshima.jp/uploaded/attachment/59180.pdf
また、厚生労働省の平成29年度生活衛生関係技術担当者研修会で、三原市から「日帰り入浴施設におけるレジオネラ症集団発生事例」が報告されています。
パワーポイント資料のリンク先は、次のとおりです。
こちら
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000194750.pdf
【展望風呂のリスクを下げるには】
①全配管の毎日排水
日本一の衛生管理施設と私が感じた、宮崎県日向サンパーク施設では、毎日、営業時間終了後の完全排水が実施されていました。
浴槽水は、毎日換水されていました。
※宮崎県日向サンパーク施設の詳細は、『レジオネラ症対策のてびき』中臣昌広著、倉文明監修(一般財団法人日本環境衛生センター)に説明があります。
別ページに、滞留水をつくらない日向サンパーク温泉施設の記事を書いています。こちら https://kankan-mirai.com/1084/
②24時間循環・通常運転する
厚生労働省「公衆浴場における衛生等管理要領」から
浴室の管理
<浴槽に湯水がある時は、ろ過器及び消毒装置を常に作動させること>
滞留水をつくらないことが大切になります。
【環監の視点】
過去の教訓を活かすことが大切です。
配管が長い場合のリスクを下げる方法
①全配管の毎日排水
②24時間循環・通常運転
【レジオネラ症対策のご相談】
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『レジオネラ症対策のてびき』の概要はこちらから確認できます。ご購入をお考えのかたも、こちらから注文ができます。
【ご案内】
【来年度講座一覧】
2024(令和6)年度のオフィス環監未来塾の講座一覧表ができました。
【環監育成講座・オンライン】
保健所・環境衛生監視員対象、現場へ行くのが楽しくなる! 講義とワークショップを通じて、専門性と現場実践力をアップさせる講座を開催します。
・環監業務の悩み、課題がありましたら、ご相談をお受けしています。
・課題の解決につながる講座をご用意しています。
・保健師の皆様への研修のご相談、避難所の衛生対策活動等のご相談をお受けしています。
月に数回、環監のための、レジオネラ症対策、防災、仕事術、講座情報など、最新情報をメールで真っ先にお届けします。ご希望される場合、こちらにご記入ください。
【実績】
・2022年、厚生労働省のレジオネラ対策のページに掲載される「入浴施設の衛生管理の手引き(令和4年5月13日)」の作成ワーキンググループのメンバーに、国立感染症研究所・倉文明先生らと共になっています。
・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度・環境衛生監視指導研修で「環境衛生監視指導の実際、公衆浴場のレジオネラ症対策」(オンライン)の講師をつとめました。
・2021年、高知県、令和3年度入浴施設におけるレジオネラ属菌汚染防止対策講習会・環境衛生監視員を対象とした現場研修会「循環式浴槽立入検査の実際について」の講師をつとめました。