【環監・保健師入門】レジオネラ症対策・かけ流し配管の洗浄方法

【環監の視点】
私の経験例をご紹介します。
特定建築物の屋上に置かれた加湿水槽でレジオネラ属菌検出があり、ビル内の加湿用給水管に次亜塩素酸ナトリウム液(100mg/L)を注入して、2時間の浸漬洗浄をおこない、菌不検出を確認しました。

温泉浴槽(イメージ写真)

こんにちは。元文京区文京保健所・環境衛生監視員で、レジオネラ症対策・避難所衛生対策の研修講師をしている「オフィス環監未来塾」中臣昌広です。

2023(令和5)年7月なかば、レジオネラ症対策オンライン講座を開催しました。

全国・保健所環境衛生監視員8名のかたが参加されました。

受講者の感想では、「公衆浴場設備を説明する動画視聴があり、わかりやすかった」「1年目でもわかりやすい内容でした」と声をいただきました。

今回の講座では、受講者の皆様から事前にいただいたご質問について、回答をご説明しました。

環監業務に役立つ内容ですので、ご紹介いたします。

【患者への聞き取り調査】

(質問)
レジオネラ症で入院した患者が、集中治療室に入った場合、本人から行動履歴が聞き取れなくなります。この場合、患者の行動履歴を聴き取る対象は、家族、職場、知人で十分でしょうか?それ以上に、対象を広げる方がよいでしょうか?

例1:患者の家族の了承を得て、患者の携帯電話の通話履歴、GPS情報を確認し、その行動を把握する。
例2:私用、仕事で車を使用していた場合、患者の家族、職場の了承を得てドライブレコーダー、カーナビゲーターの記録を確認し、その行動を把握する。

(回答)
犯罪捜査ではありません。捜査権はありません。
感染症法上の積極的疫学調査の位置づけで、
相手方に協力を得ての聞き取りが主になると思われます。

【調節箱への菌の入り込み】

(質問)
レジオネラ属菌は人体に付属して持ち込まれるため、浴槽の中に菌が入ってしまうことは避けられないようですが、浴槽やシャワー水の調節箱にレジオネラ属菌が入り込むことは、防げないのでしょうか。

(回答)
開放型か密閉型かによります。
開放型であれば、土ぼこりなどが自然に入ってしまうでしょう。
たとえば、窓開放のとき、近隣で建築工事、道路工事などがあると影響が大きいと思います。

【浴槽の洗浄剤】

(質問)
最近は、こすらずにぬめりを落とせる家庭用浴槽・浴室洗剤があります。その洗剤は、中型から小型の循環ろ過器の配管洗浄剤として使用できますか。
通常使用される過酸化水素水に比べ、やはり、洗浄能力不足でしょうか?

洗浄能力が十分であれば、過酸化水素水のように、後から中和剤を投入する必要もなく、配管洗浄作業の経済的、時間的効率が上がると思いますが、いかがでしょう。また、当該家庭用浴槽・浴室洗剤が使用できた場合、ろ材に悪影響はありますか?

ろ材:砂ろ過、珪藻土、カートリッジ式
(活性炭(逆洗不要ろ過器)、合成繊維、ポリエステル)
生物浄化装置

(回答)
成分が過炭酸ナトリウムの場合、配管洗浄剤として使われています。ろ過器のろ材が砂のときは、そのまま循環洗浄されます。

珪藻土は、1~7日に1回交換、カートリッジは一定期間で交換されますので、珪藻土やカートリッジは除いて、配管洗浄されると考えられます。

【ヒトヒト感染の可能性】

(質問)
レジオネラ症について、「ヒトからヒトへの感染は報告されていない」とのことですが、レジオネラ症にり患した人は、唾液中などにレジオネラ属菌を排出しますか。

もし排出するのであれば、発症後(前)何日目から排出するなどの情報についても合わせてご教示いただけると大変助かります。

以前に、高齢者福祉施設の入浴介助を行っていた職員がレジオネラ症を発症し、その施設の入浴設備について使用自粛を要請するか悩んだことがあります。

レジオネラ症を発症したヒトが入浴施設を汚染し、感染が広がる可能性はあるのでしょうか。

(回答)
ヒトからヒトへはありません。感染源として考えなくていいと思います。

【欧米の空調設備からの菌検出】

(質問)
アメリカやヨーロッパは冷却塔や空調設備からレジオネラ属菌が検出されることが多いとありますがその理由はなぜでしょうか。

(回答)
最初に感染源としてあがったのが冷却塔でした。日本では、殺菌剤の普及があり、菌が抑えられているかもしません。

海外では、注意が向けられるのが空調設備という背景はあったと思います。日本のように公衆浴場、温泉施設の大浴場のような入浴施設がない場合、空調設備に集中して目が向けられているというのはあるでしょうね。

2012年のロンドンオリンピックの際には、ロンドンの冷却塔設備が登録されて、問題がないかチェックされたと聞きました。

【打たせ湯・ジェット風呂の注目点】

(質問)
打たせ湯やジェット風呂のようなエアロゾルの発生しやすい設備のレジオネラ対策について、施設立ち入り時に確認すべき箇所や事業者への助言指導すべき点があればご教示ください。

(回答)
打たせ湯:原水が何か。どういう経路で末端まで来ているか。営業時間外に、止めているかなどがチェック点になると思います。

ジェット風呂:2022年の神戸市の事例から、気泡発生装置部分に滞留水の可能性があり、菌の発生源になり得ます。

装置内の洗浄・殺菌の実施はあるか。いつ配管洗浄を実施したか。その前は、いつ配管洗浄を実施したかなど確認できるといいでしょう。

【かけ流し浴槽の配管の洗浄方法について】

(質問)
循環式浴槽の場合、配管中の生物膜の生成防止のために逆洗浄や高濃度の塩素消毒液を循環させる方法があると思いますが、かけ流し(貯湯槽なし)の配管の清掃方法は何かありますでしょうか。専門の業者に委託するしかないのでしょうか。

(回答)
一方向の配管の場合、先端に蓋をして、過酸化水素などの薬剤を入れて一定時間の浸けおきによる洗浄を実施したケースを聞きました。

一度は専門業者に依頼して作業を実施し、その作業方法を見学して自ら作業可能と判断する場合は、次回以降、自主作業とすることも選択肢の一つだと思います。ただし、過酸化水素は劇物に該当しますので、取り扱いに注意が必要です。

【ミスト発生装置】

(質問)
 最近、熱中症予防でミストを設置しているところがあり、学校等でも設置しているところがあるようですが、レジオネラのリスクはやはりあるものでしょうか?

(回答)
過去の報告で、ミスト発生装置で細菌(レジオネラ属菌ではない)発生・増殖の可能性を聞いたことがあります。水のタンクでの滞留、タンクへ直射日光があたることでの温度上昇などが背景にあったと記憶しています。

【環監の視点】

一方向の配管の場合、先端に蓋をして、過酸化水素などの薬剤を入れて一定時間の浸けおきによる洗浄を実施したケースを聞きました。

参考までに、別の私の経験例があります。

特定建築物の屋上に置かれた加湿水槽でレジオネラ属菌が発見され、ビル内の加湿用給水系統の配管を洗浄した事例があります。

そのときは、加湿用給水管に次亜塩素酸ナトリウム液(100mg/L)を注入して、2時間の浸漬洗浄をおこないました。

その後の検査で、レジオネラ属菌が陰性になりました。

可能な方法で対処することで、解決へ結びつくことがあります。

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【実績】

・2022年、厚生労働省のレジオネラ対策のページに掲載される「入浴施設の衛生管理の手引き(令和4年5月13日)」の作成ワーキンググループのメンバーに、国立感染症研究所・倉文明先生らと共になっています。

・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度・環境衛生監視指導研修で「環境衛生監視指導の実際、公衆浴場のレジオネラ症対策」(オンライン)の講師をつとめました。

・2021年、高知県、令和3年度入浴施設におけるレジオネラ属菌汚染防止対策講習会・環境衛生監視員を対象とした現場研修会「循環式浴槽立入検査の実際について」の講師をつとめました。

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