【環監・保健師入門】レジオネラ症対策・採水と試料検体の保存

【私の視点】
患者発生時の調査、処分を伴う調査のときには、現場へ行く前に、<公衆浴場における浴槽水等のレジオネラ属菌検査方法>の「採水手法」「検水の搬送と保存」の内容を再確認することが大切です。
その前に、日常の段階で、必要な器具や容器等が揃っているかの確認が大切です。

浴槽水の採水

こんにちは 元文京区文京保健所・環境衛生監視員で、レジオネラ症対策の研修講師をしている「オフィス環監未来塾」中臣昌広です。

2023(平成5)年6月下旬、「レジオネラ症対策を現場で学ぶ 基本とスキル習得講座・実践編2日間コース」(会場開催、公衆浴場施設の現場見学付、主催:オフィス環監未来塾)を開催しました。

県・政令指定都市・中核市の保健所・環境衛生監視員、合計3名のかたが参加されました。

都内の公衆浴場施設を実習会場に、公衆浴場設備の見学とともに、浴槽水・シャワー水の水質検査の採水法、ATP検査法、pH測定法などを体験していただきました。

受講者のかたから「すぐに現場で実践できそうだ」と声をいただきました。

講座のなかで、質問がありました。

環監業務に役立つ内容ですので、ご紹介します。

【採水の深さ】

(質問)
浴槽水は、水面からどのくらいの深さで採水したらいいのですか?

(回答)
私自身は、深さ15~30cmでの採水を心がけていました。

たとえば、20cmとすると、水中に、手で持った容器を入れたとき、肘の手前まで湯が浸かる深さになります。

〈厚生労働省・令和元年9月19日付通知 公衆浴場における浴槽水等のレジオネラ属菌検査方法について〉では、採水時の水面下の深さについて記述を見つけることはできませんでした。

要は、汚れが浮かぶ表層水の影響を受けない深さでの採水になります。

参考までに、<厚生労働省・平成19年5月28日付通知 遊泳用プールの衛生基準について>のなかに、深さにふれた記述があります。

「水質検査の試料採水地点は、矩形のプールではプール内の対角線上におけるほぼ等間隔の位置3箇所以上の水面下20cm及び循環ろ過装置の取入口付近を原則とすること」

ここでは、深さ20cmとなっています。

【柄杓の使用】

(質問)
手で採水して、いいのですか?

(回答)
前記の<公衆浴場における浴槽水等のレジオネラ属菌検査方法について>のなかで、採水にあたっては、滅菌または消毒した柄杓等を使用すると書かれています。

複数の検水を採取する場合、必要数の滅菌した柄杓を準備するか、採水するたびに消毒用アルコールで柄杓を消毒して使用するとなっています。

採水時は、手袋とマスクを装着することが望ましいとされています。

患者発生時の調査では、柄杓による採水の実施が重要です。

なぜなら、処分に至るとき、どういう方法で採水されたかも処分の判断の過程で考慮されるからです。

採水した湯を、柄杓から容器に移すとき、検水で容器を満杯にせず、上部に空間を残すようにします。

これは、開栓時に湯をこぼさないようにし、採水容器内に空気を残すためです。

【試料検体の保存】

(質問)
採水した試料検体の保存は、どのようにするのですか?

(回答)
前記の<公衆浴場における浴槽水等のレジオネラ属菌検査方法について>で確認しましょう。

検水の搬送と保存は、次のとおりです。

「検水は、6~18℃で搬送し、検査室に搬入後速やかに検査に供する。

ただちに検査が実施できない場合は、6±2℃で冷蔵保存し、採水後2日以内に検査を実施することが望ましい。

再検査を含め5日以内に検査を実施する。

採水から検査までに要した時間を記録する」

なお、検水の輸送または保存中に生菌数が変化する可能性を考慮して、温度の記録も残すことが望ましいとされています。

食品衛生の収去検体運搬時に、温度のデータを記録するのと同じものですね。

記録できる測定器が必要になります。

【私の視点】

検査における各行為には、なぜそうするのか、意味、理由があります。

たとえば、水面下15~30cmで採水するのは、表層水の影響を受けないためです。

患者発生時の調査、処分を伴う調査のときには、現場へ行く前に、<公衆浴場における浴槽水等のレジオネラ属菌検査方法>の「採水手法」「検水の搬送と保存」の内容を再確認することが大切です。

その前に、日常の段階で、必要な器具や容器等が揃っているかの確認が大切です。

【ご案内】

【環監育成講座・オンライン】

保健所・環境衛生監視員対象、現場へ行くのが楽しくなる! 講義とワークショップを通じて、専門性と現場実践力をアップさせる講座を開催します。

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【実績】

・2022年、厚生労働省のレジオネラ対策のページに掲載される「入浴施設の衛生管理の手引き(令和4年5月13日)」の作成ワーキンググループのメンバーに、国立感染症研究所・倉文明先生らと共になっています。

・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度・環境衛生監視指導研修で「環境衛生監視指導の実際、公衆浴場のレジオネラ症対策」(オンライン)の講師をつとめました。

・2021年、高知県、令和3年度入浴施設におけるレジオネラ属菌汚染防止対策講習会・環境衛生監視員を対象とした現場研修会「循環式浴槽立入検査の実際について」の講師をつとめました。

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