【環監・保健師入門】レジオネラ症対策・補給水と菌発生の関係

【私の視点】
多量の補給水が供給されても、菌発生の可能性があります。
レジオネラ症対策のため、浴槽水の換水、定期的な浴槽・配管等の洗浄、浴槽水の消毒など、適切な衛生管理が必要です。

浴槽の補給水(イメージ写真)

2023(令和5)6月上旬、都内で開催されたレジオネラ対策シンポジウム(主催:NPO入浴施設衛生管理推進協議会)に参加しました。

テーマは、「温泉施設におけるレジオネラ対策と今後の課題について」です。

会場には、協議会会員、行政関係者など約30人が出席しました。

ハイブリッド開催のオンラインでは、140人以上が参加しました。うち、行政関係者約120人が参加しました。

【プログラム内容】

1 保健所様へのアンケート調査回答からの考察  
  アンケート調査内容:温泉施設におけるレジオネラ対策
  NPO浴衛協・事務局 清野裕一氏

2 今般、報道された旅館様へ訪問して
  報道前後で改善された対応および当NPO浴衛協が協力した内容などについて
  NPO浴衛協・理事・九州支部長 新道欣也氏

3 レジオネラ属菌検出リスクRDL注意報の予報を考える
  NPO浴衛協・理事 小弾正公彰氏

4 事例紹介①介護施設様、デイサービスセンター様でのレジオネラ対策
  NPO浴衛協 レジオネラ対策アドバイザー 八重樫英樹氏

5 事例紹介②温泉施設様におけるレジオネラ対策事例
  NPO浴衛協 会長 中島有二氏

シンポジウムのご講演から、私が理解した内容、印象に残った内容は、次のとおりです。

【換水頻度の低さ】

(アンケート質問)所管する施設で、換水頻度の低い(週1回を超えるもの)現場は、ありましたか?

(アンケート保健所回答)YES 26件(39%)

換水頻度が低い施設が、現場で相当数あることが推測されました。

【浴槽水のATP値を下げる方法】

(アンケート返送の質問)新鮮補給以外の方法で、浴槽水のATP値をさげる方法があるかどうか。

(質問に対する主催者回答)
・強い酸化剤:次亜塩素酸、過酸化水素、オゾンなどの存在でATPは分解し低値を示すが、ヒトの入浴に不向き。
・オーバーフロー
・浴槽璧、配管内面などのバイオフィルム汚染に目を向ける

配管洗浄の工程でATP測定を実施した私の経験から、過炭酸ナトリウムなど洗浄剤の使用、すすぎに伴う換水の実施、消毒剤の次亜塩素酸ナトリウムの添加のあと、いずれもATP値が下がりました。

入浴中にATP値を下げるには、次亜塩素酸ナトリウムの適正濃度維持と、新鮮補給水の量を増やし、浴槽水をオーバーフローさせることが有効だと思います。

【補給水とレジオネラ属菌検出】

報道された福岡県の旅館では、大浴場の男女浴槽が各約12m3とのことです。計約24m3です。

浴槽への温泉補給水量は、1日あたり100m3といわれています。

補給水が1日あたり浴槽の約4倍量になると計算できます。

にもかかわらず、保健所の行政検査では、37,000 CFU/100mL が検出されました。

多量の補給水が供給されても、菌発生の現状があるということです。

このことから、レジオネラ症対策のため、浴槽水の適切な換水、定期的な浴槽・配管等の洗浄、浴槽水の消毒など、衛生管理の必要性がわかります。

なお、報告者の新道氏から、当該旅館では、現在、毎日換水が実施されていると話がありました。

【私の視点】

多量の補給水が供給されても、菌発生の可能性があります。

レジオネラ症対策のため、浴槽水の換水、定期的な浴槽・配管等の洗浄、浴槽水の消毒など、適切な衛生管理が必要です。

【ご案内】

【現場レジオネラ講座】

保健所・環境衛生監視員対象、レジオネラ症対策を現場で学ぶ、基本とスキル習得講座・実践編2日間コース(会場開催、公衆浴場施設の現場見学付)を開催します。

【環監育成講座・オンライン】

保健所・環境衛生監視員対象、現場へ行くのが楽しくなる! 講義とワークショップを通じて、専門性と現場実践力をアップさせる講座を開催します。

【レジオネラ症対策オンライン講座】

保健所・環境衛生監視員対象、衛生指導に自信がもてる! 現場動画解説と講義、ワークショップを通じて、環監視点から現場理解が深まり、衛生指導に自信がもてるようになる講座を開催します。

・環監業務の悩み、課題がありましたら、ご相談をお受けしています。

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【実績】

・2022年、厚生労働省のレジオネラ対策のページに掲載される「入浴施設の衛生管理の手引き(令和4年5月13日)」の作成ワーキンググループのメンバーに、国立感染症研究所・倉文明先生らと共になっています。

・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度・環境衛生監視指導研修で「環境衛生監視指導の実際、公衆浴場のレジオネラ症対策」(オンライン)の講師をつとめました。

・2021年、高知県、令和3年度入浴施設におけるレジオネラ属菌汚染防止対策講習会・環境衛生監視員を対象とした現場研修会「循環式浴槽立入検査の実際について」の講師をつとめました。

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