【環監・保健師入門】防災・企業防災(組織防災)を考える

【私の視点】
命より大切なものはない。
命をまもる。そのための災害時の組織の行動ルールづくりが必要だと思いました。

みやぎ東日本大震災津波伝承館(2022年5月撮影)

こんにちは 元文京区文京保健所・環境衛生監視員で、防災・避難所・避難生活の衛生対策の研修講師をしている「オフィス環監未来塾」中臣昌広です。

2023(令和5)年5月上旬、宮城県石巻市にある「みやぎ東日本大震災津波伝承館」で、語り部講話を聞きました。

講師は、七十七銀行女川支店勤務の息子さん(田村健太さん)を津波被害で亡くされた田村孝行さんです。

県内外から、約20人のかたが参加しました。

私の手元には、田村孝行さんが代表をつとめる一般社団法人健太いのちの教室の「宮城女川語り継ぐ命」のパンフレットがあります。

パンフレットと田村さんの話から、私が理解した内容をご紹介します。

【宮城県女川町の被災】

2011(平成23)年3月11日午後2時46分、東日本大震災が発生しました。

女川町は、震度6弱でした。

2時50分、気象庁が大津波警報発令、予想津波高さは6m。

女川町の防災無線「大津波警報が発令されたので、至急、高台へ避難してくさい」

女川は、過去に何度も津波を経験していました。

三陸海岸に面し、リアス式海岸の特徴のV字型の湾口が、津波高さの増幅や水の遡上を引き起こすのです。

【行員12人の命が犠牲に】

七十七銀行女川支店では、当日14人が出勤、発生時に支店長は不在でした。

2時55分頃、支店長が戻りました。

3時前後、支店長はスタッフ(パート)1人の帰宅を許可し、仙台市の本店へ「屋上へ避難する」と連絡しました。

3時5分頃、支店長を含む13人が2階建の高さ10mの支店屋上へ避難しました。

3時20分すぎ、津波が到達しました。屋上の塔屋へ上った従業員は、津波に流されました。

流された13人のうち、1人が救助され、4人のかたが亡くなり、8人のかたが行方不明になりました。

【企業防災・組織防災のあり方】

悔やまれるのは、支店から走って1分ほどで堀切山があり、高台への避難が可能だったことです。

町では600人以上のかたが高台へ避難して、命が助かっています。

町のなかの他の三つの金融機関は、避難して全員無事でした。

今回の講話から、企業の組織のなかで、上司の指示に絶対に従うという背景があったと考えらました。

しかし、人は完全ではないのも確かです。誰であっても、ミスはあり得ます。

過去の災害の歴史を把握して、女川の地形的な特徴から津波被害の起こりやすいことが認識されていれば、別の行動になったかもしれません。

人が生きていくなかで、命より大切なものはありません。

田村さんは、地震や津波などの災害時に命の危険を感じたとき、上司の指示を待たずに勝手に逃げる選択肢があってもいいのではないかと述べています。

【教訓を生かす】

田村さんは、息子さんの事例をとおして、自分ごととして考えてほしいと呼びかけました。

田村さんの挙げた教訓は、次のとおりです。

①最悪を想定し最善を尽くす

②過去の出来事から学ぶ
(明日は我が身として)

【私の視点】

講話のあと、質疑応答になり、私は手をあげました。

私が話した主な内容は、次のとおりです。

企業と個人との関係を考えさせられました。

お話のなかで、『地震や津波などの災害時に命の危険を感じたとき、上司の指示を待たずに勝手に逃げる選択肢があってもいいのではないか』とありました。

(私は、言葉をくわえました)

原発事故があった福島県の村を訪ねたとき、村長がこう話していたのを思い出しました。

「事故のとき、村職員のなかには、危険を感じて家族とともに先に避難した職員がいました。

 残った職員で、村民の安全避難のために動きました。

 そのあと、職場放棄で職務規程に反するということで、先に避難した職員を懲戒免職の処分にしました」

村長の顔は、迷ったすえに処分を下したように見えました。

公務員であった私は、家族から、仕事を捨ててでも一緒に逃げてほしいと言われたら、どう行動するのか、考えてしまいました。

答えは出ません。

田村さんの言葉にあった企業と個人(社員)、地方自治体組織と個人(公務員)、それぞれに違いがあるのだろうかと考えてしまいました。

田村さんは、「違いはあるかもしれません。ただ、災害時にどのような行動をとるのか、あらかじめ考え、この場合にはこうするとルールをきめておくのがいいのではないかと思います」と話しました。

私は、こう感じています。

命より大切なものはない。

命をまもる。そのための災害時の組織の行動ルールづくりが必要だと思いました。

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・2021年、東京都特別区職員研修所、令和3年度専門研修「地域保健」(主に保健師対象)で、「新型コロナウイルスを踏まえた避難所の衛生対策、保健所・環境衛生監視員の視点から」の講師をつとめました。

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