【環監・保健師入門編】新型コロナ対策・空気の流れを視覚化する
【私の視点】
家庭のリビング大の小さな空間でも、換気扇の使用で空気の淀みができる可能性があります。
対面換気をするとき、自然換気で、両側の窓を広く開ける、あるいは一方の窓を広く開けるやり方により、空気が面で流れます。
2023年2月中旬、オンライン開催のかながわ疫学勉強会(主宰:元神奈川県職員、小池剛氏)で講師をつとめました。
「感染症と空気環境」をテーマに、約80分間お話ししました。
保健師、食品衛生監視員、環境衛生監視員、試験検査担当など自治体関係者約30人が参加しました。
講演では、動画のなかで、気流検査器(スモークジェネレーター)で煙を発生させて、空気の流れを視覚化しました。
現場での換気指導のご参考になると思いますので、ご紹介します。
【扉1カ所のみの自然換気の実効性】
冬の自然換気をみてみましょう。
実証実験をしたのは、2月上旬の昼頃でした。
外気温は約6℃でした。
公衆浴場の入り口扉付近で空気の流れを調べました。
実験で使ったのは、陸上リレーのバトン大の気流検査器(スモークジェネレーター)です。
ボタンを押すと、プロピレングリコールとグリセリンとが反応して白煙が出ます。
入り口扉を開き、脱衣場の換気扇を止めた状態で、煙の流れをみました。
膝下くらいで煙が真横にたなびくくらいになりました。
一方で、頭から上のあたりで、ゆっくりと室内から外へ煙が流れました。
扉1カ所でも、自然換気が確認できたのです。
【対面換気の換気扇利用の注意点】
理髪店での実証実験では、二方向換気として、画面右側の換気扇と対面の空間を開放したときの空気の流れを調べました。
気流検査器を使い空気の流れをみると、意外なことがわかりました。
家庭のリビングと同じくらいの空間のなかで、空気の流れる場所と流れにくい場所とが存在していたのです。
特に、空気が流れたのは、換気扇と直線上の位置にある天井近くでした。
直線上から外れた場所や、肩から下の空間では、換気扇への空気の明らかな流れを感じることができませんでした。
【私の視点】
空気の流れの実証実験から、小さな空間でも、換気扇の使用で空気の淀みを生む可能性があります。
換気扇と対面の窓とで二方向換気をする場合、換気扇への直線的な空気の流れが発生してしまうかもしれないと感じたのです。
対面換気をするとき、自然換気で、両側の窓を広く開ける、あるいは一方の窓を広く開けるやり方が、空気を面で流すという点で優っていると感じました。
このとき、呼び水的に、換気扇や扇風機、サーキュレーターを使い、当初の空気の流れをつくるのもいいでしょう。
ただし、扇風機やサーキュレーター、送風機付き空気清浄機など、風を送るものは、飛沫やエアロゾルを拡散させる可能性があります。
過去のクラスター事例で、多数人が在室する部屋で、サーキュレーター使用による感染拡大がありました。
高齢者がいる空間では特に、風を人に直接あてない向きにすることが大切です。
【ご案内】
・環監業務の悩み、課題がありましたら、ご相談をお受けしています。
・課題の解決につながる講座をご用意しています。
・保健師の皆様への研修のご相談、避難所の衛生対策活動等のご相談をお受けしています。
月に数回、環監のための、レジオネラ症対策、防災、仕事術、講座情報など、最新情報をメールで真っ先にお届けします。ご希望される場合、こちらにご記入ください。
【実績】
・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度 住まいと健康研修で「災害時の公衆衛生活動」(オンライン)の講師をつとめました。
・2022年、東京都特別区職員研修所、令和4年度専門研修「地域保健」(主に保健師対象)で、「災害時の避難所の衛生・感染症対策、保健所・環境衛生監視員の視点から」の講師をつとめました。
・2022年、かながわ疫学勉強会(主催:元神奈川県食品衛生監視員・小池剛氏)で「感染症と空気環境」(オンライン)の講師をつとめました。