環監のためのレジオネラ症対策【入門】アメーバがレジオネラを培養する

【私の視点】
レジオネラ属菌水質検査で低量検出のとき、アメーバが多く生息している可能性があります。
アメーバ体内で増えたレジオネラ属菌が排出されれば、人への感染が起きるかもしれません。

アメーバ検査の様子

2022(令和4)年10月中旬の夜、第17回環監未来塾私塾の講演会「公衆浴場等のレジオネラ症対策
、アメーバの生態とレジオネラ症対策」をオンライン開催しました。

講師は、国立感染症研究所 寄生動物部 八木田健司氏です。

私塾には、全国の保健所・環境衛生監視員14名のかたが参加しました。

【私の理解した内容】

・アメーバ(環境中)の体内でレジオネラ属菌が増える。同じように、人のマクロファージ(体内)でレジオネラ属菌が増えて、発症につながる。

・レジオネラ属菌の宿主となるアメーバについて、4つのキーワードがある。

・変える:細菌学的性質がアメーバの中で変わる。感染性が上がる。

・殖やす:レジオネラ属菌の増殖装置である。

・譲る(まもる):レジオネラ属菌は、アメーバ内で護られている。殺菌でレジオネラ(-)のあと、再びレジオネラ(+)の原因は、レジオネラ属菌がアメーバの中で生きているからである。アメーバ・シスト内で生きている。

・運ぶ:アメーバが動く先で、感染が起きる可能性がある。

・アカントアメーバ:塩素100mg/L,10分で生存する。

・一つの理論は、次のとおりである。

 <宿主アメーバの体内から:径2~6μmの海苔巻状の小胞(レジオネラ属菌が100個くらいまで)が放出される。

水しぶきに入る(エアロゾルより大きい水滴)ので、しぶきを吸い込んで感染が起こる可能性がある。

レジオネラ属菌の検出量が低いときの感染経路になる可能性>

・温泉浴槽水:アメーバ46%検出のデータもある。

・アメーバの対処法

①薬剤による除去

・モノクロラミン:浴槽水で有用
 栄養体:3mg/L、15分間処理で生存率0.1%以下
 シスト:3mg/L、24時間処理で生存率0.1%以下

②加熱消毒
 70℃前後の高温水につける。

③物理的除去(バイオフィルム対策)
 配管洗浄

【質疑応答】

◎質疑応答から、ご参考になるものを挙げました。

質問:酸性泉でアメーバは死ぬのですか。

回答:酸性が強い硫黄泉ではほとんどいない。
   レジオネラ属菌もほとんどいない。

質問:資料のキーワードで「変わる」というのはどういう意味ですか。

回答:宿主のアメーバの体内に入ったレジオネラ属菌は、環境中のレジオネラ属菌と比べて、丈夫な菌に成長して外に出ていきます。まさに、スポーツクラブで鍛えて体が変わるイメージです。

質問:アメーバは、はじめはどこからくるのでしょうか。

回答:土の中、水の中にいます。ハウスダストにもいます。乾燥した場所では、環境から身を守るため殻を被るようなシストの形になります。

質問:アメーバがどうレジオネラ菌の増殖に寄与していくのですか。

回答:宿主のアメーバの体内に入ったレジオネラ属菌は、増殖をつづけ、1,000~2,000個になると、アメーバを破って環境中へ出ていきます。

質問:最近、高濃度塩素消毒している施設でのレジオネラ検出が増えています。何が良くないのかよくわかりません。また、根本的な解決方法はないのでしょうか?

回答:アカントアメーバは、塩素100mg/L,10分で生存するというデータもあります。高濃度消毒で、アメーバが死滅していない可能性があります。モノクロラミン消毒が有効の可能性があります。アメーバがシストの形で、モノクロラミン3mg/L、24時間処理で生存率0.1%以下のデータがあります。

【私の視点】

公衆浴場法や旅館業法の入浴設備の衛生管理のターゲットは、肺炎を引き起こす可能性のあるレジオネラ属菌です。

しかし、重要なターゲットは、レジオネラ属菌の培養器である「アメーバ」と言うことができるでしょう。

レジオネラ属菌水質検査で低量検出のとき、アメーバが多く生息している可能性があります。

アメーバ体内で増えたレジオネラ属菌が排出されれば、人への感染が起きるかもしれません。

配管洗浄、モノクロラミン消毒が有用との話を聞き、現場での効果を確認したいと思いました。

環監は、絶えず、衛生管理上、アメーバの存在を意識する必要があると考えました。

【ご案内】

・環監業務の悩み、課題がありましたら、ご相談をお受けしています。

・課題の解決につながる講座をご用意しています。

・保健師の皆様への研修のご相談、避難所の衛生対策活動等のご相談をお受けしています。

月に数回、環監のための、レジオネラ症対策、防災、仕事術、講座情報など、最新情報をメールで真っ先にお届けします。ご希望される場合、こちらにご記入ください。

所属(必須)

職種(必須)

自治体名(任意)

担当者名(必須)

メールアドレス(必須)

【実績】

・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度 住まいと健康研修で「災害時の公衆衛生活動」(オンライン)の講師をつとめました。

・2021年、東京都特別区職員研修所、令和3年度専門研修「地域保健」(主に保健師対象)で、「新型コロナウイルスを踏まえた避難所の衛生対策、保健所・環境衛生監視員の視点から」の講師をつとめました。

Follow me!