【環監・保健師向け】レジオネラ・DPD測定でピンクから透明に
【DPD測定でピンクから透明に】
1 DPD測定が透明になる理由
2 高濃度塩素の場合
3 質問者への提案
4 塩素濃度の計算方法
5 塩素濃度の測定法
6 環監の視点(経験を積む)

こんにちは。元文京区文京保健所・環境衛生監視員で、『レジオネラ症対策のてびき』著(倉文明監修、一般財団法人日本環境衛生センター)、レジオネラ症対策・避難所衛生対策の研修講師をしている「オフィス環監未来塾」中臣昌広です。
旅館業施設の営業者のかたから、ご相談がありました。
主な内容は、次のとおりです。
<小規模な旅館です。浴室に、家庭風呂の倍くらいの大きさの浴槽があります。浴槽水を、簡易な循環ろ過をして使用しています。消毒剤の液体の次亜塩素酸ナトリウムを、浴槽に直接、入れています。DPD測定をすると、最初はピンク色になるのですが、時間をおくと透明になってしまいます。原因と対処を知りたいです>
詳しく尋ねると、原水は水道水で、次亜塩素酸ナトリウムを浴槽に、 400~500 mL 入れているそうです。
何が起きているか、調べてみました。
環監の衛生監視にも役立つ内容ですので、ご参考にしてください。
なお、DPD測定は、浴槽水の消毒の塩素濃度を測るものです。
一例では、小さな箸箱を立てたくらいの透明な容器に、水10 mL を入れ、試薬を加えると、ピンク色に染まります。
測定器前面の濃度ごとの色見本と比較して、濃度を出します。
色の濃淡で濃度がわかるのです。
DPD測定の詳しい説明は、『レジオネラ症対策のてびき』中臣昌広著・倉文明監修(一般財団法人日本環境衛生センター)P16 に書かれています。
下記の記述は、株式会社ヘルスビューティ・シニアテクニカルアドバイザーの藤井明氏のご意見を参考にしました。
1 【DPD測定が透明になる理由】
今回は、最初は色がつき、そのあと、透明になるとのことでした。
実は、DPD試薬を加えると一瞬発色して、すぐに透明になることがあるのです。
残留塩素濃度が高いことが推測され、塩素系薬剤が過剰に添加されている可能性があります。
専門家の話では、次亜塩素酸ナトリウムの酸化漂白作用で、脱色されるのではないかということです。
浴槽水に添加する 400~500 mL が12%次亜塩素酸ナトリウムの原液でしたら、浴槽の容量を家庭用の倍くらいの 400L として計算すると、通常の浴槽水の遊離残留塩素濃度 0.4~1.0 mL の100倍以上あると推測されます。
高濃度になります。
私が実験したところ、通常の浴槽水の消毒の1,000倍くらいの濃度で、DPD測定をしたところ、一瞬、ピンク色に染まり、すぐに透明になりました。
ただ、透明容器の底に、ピンク色が残りました。

透明な液の下にピンク色が残れば、塩素剤が高濃度だと推測できるかもしれません。
2 【高濃度塩素の場合】
浴槽水から塩素臭を感じるかもしれません。
入浴者の皮膚への刺激がある可能性があります。
別ページに、高濃度塩素に関係して、「プールと健康被害例」を掲載しています。
配管系統では、場合により、配管が腐食されて、配管内で錆の発生の可能性が出てきます。
3 【相談者への提案】
適正な塩素濃度か、確認が必要でしょう。
浴槽水の衛生管理、レジオネラ症対策を考えると、浴槽水の遊離残留塩素濃度は、0.4~1.0 mg/L程度が適正な塩素濃度になります。
目標の遊離残留塩素濃度を、0.6~0.8 mg/L 程度にするやり方があります。
DPD測定器をお持ちでしたら、いまの 1/100 くらいの量の次亜塩素酸ナトリウムを入れて、遊離残留塩素濃度を測定してみてはいかがでしょうか。
その測定値の塩素濃度をみて、加える次亜塩素酸ナトリウムの量を調整してみてもいいかもしれません。
4 【塩素濃度の計算方法】
家庭用風呂を、200L と仮定して、相談にあった2倍の容量では、400L になります。
12%次亜塩素酸ナトリウムの比重を、1.2 とします。
12%次亜塩素酸ナトリウム 400mL を浴槽水に入れたとします。
浴槽水中の有効塩素の量は
400 mL × 1.2 g/mL × 12 % = 57.6 g
浴槽水の塩素濃度は
57.6 × 1,000 mg / 400 L = 144 mg/L
高濃度になることがわかります。
5 【塩素濃度の測定法】
別ページに、塩素濃度の測定法の詳しい説明があります。
6 【環監の視点】経験を積む
塩素が高濃度のとき、DPD試薬発色後に透明になる現象をはじめて経験しました。
実際に、塩素濃度約1,000 mg/L で実験したとき、現象を認識することができました。
環監の現場では、経験を積み、知識・スキルの引き出しを増やすことが現場力を高めることにつながると思います。
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【実績】
(書籍)
・2022年、厚生労働省のレジオネラ対策のページに掲載されている「入浴施設の衛生管理の手引き(令和4年5月13日)」の作成ワーキンググループのメンバーに、国立感染症研究所・倉文明先生らと共になっています。
・2013年、『レジオネラ症対策のてびき』倉文明監修(一般財団法人日本環境衛生センター)を出版しました。
(活動)
・2017年、広島県三原市の公衆浴場施設で起きたレジオネラ症集団感染事例において、現地の三原市で次のとおりご協力しました。
①行政の対応強化(職員研修会の開催、対策指針・対策事業の提案など)
②管内施設の衛生管理徹底(レジオネラ症対策講習会の開催、講習会後の個別相談など)
③事故発生施設への対応(現地調査・事故の原因究明の協力、改善方法の検討など)
(講師)
・2024年、宮崎県・宮崎市、施設向け令和6年度レジオネラ属菌汚染防止対策講習会「公衆浴場・旅館・ホテル・福祉施設・医療施設等の入浴設備の衛生管理」の講師をつとめました。
・2024年、(公財)青森県生活衛生営業指導センター、公衆浴場・旅館・ホテル等施設向けレジオネラ症発生予防対策研修会「レジオネラ症対策の基礎知識と入浴施設の衛生管理の方法」の講師をつとめました。
・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度・環境衛生監視指導研修で「環境衛生監視指導の実際、公衆浴場のレジオネラ症対策」(オンライン)の講師をつとめました。
・2021年、高知県、令和3年度入浴施設におけるレジオネラ属菌汚染防止対策講習会・環境衛生監視員を対象とした現場研修会「循環式浴槽立入検査の実際について」の講師をつとめました。