【環監・保健師入門】レジオネラ症対策・モノクロラミン消毒を知る

【環監の視点】
モノクロラミン消毒のメリットは、中性~弱アルカリ性で有効なこと、管理濃度で水中での残留性が高いこと、臭気がほとんどないことなどがあります。
デメリットは、従属栄養細菌が増えること、水質検査のとき生菌不検出で迅速法(LAMP法)陽性があることです。
遺伝子構造を分解する力が、次亜塩素酸ナトリウムより弱いことが考えられます。
なお、モノクロラミン消毒の場合も、週1回の高濃度塩素消毒、年に1回程度の配管洗浄等の衛生管理は必要です。

残留塩素濃度測定の様子

こんにちは。元文京区文京保健所・環境衛生監視員で、レジオネラ症対策・避難所衛生対策の研修講師をしている「オフィス環監未来塾」中臣昌広です。

2023(令和5)年12月中旬、国立感染症研究所の関連のレジオネラ研究(公衆浴場の衛生管理の推進のための研究)の会議に出席しました。

モノクロラミン関係の報告がありました。

もう一度、モノクロラミン消毒の基礎知識をおさらいしたいと思います。

以下の説明につきまして、以前に環監未来塾私塾でご講演いただいた、専門家の株式会社ヘルスビューティ・シニアテクニカルアドバイザーの藤井明氏のご意見を参考にしました。

【モノクロラミン消毒とは】

レジオネラ症対策の拠り所のひとつの参考文献『レジオネラ症防止指針 第4版』(公益財団法人日本建築衛生管理教育センター)では、浴槽水の消毒方法にふれています。

私の見てきた現場では、比較的安価で扱いやすい液体の次亜塩素酸ナトリウムが多く用いられていました。

現場で聞いた、浴槽水に入れる次亜塩素酸ナトリウムのデメリットは、①露天風呂では日光の紫外線で分解されて濃度が下がる、②濃度を上げると薬湯の色が消える、③お客さんが増えると濃度が下がる、④アルカリ性だと効果が落ちるなどがありました。

次亜塩素酸ナトリウムは、遊離塩素として次亜塩素酸と次亜塩素イオンのふたつの形で消毒作用をもっています。

pHにより、アルカリ側で消毒効果が下がる傾向があります。

一方、最近、注目されているモノクロラミン消毒は、結合塩素として、遊離塩素より消毒の力が小さくても、安定的に存在して、アルカリ側や、アンモニア性窒素、鉄、マンガン、フミン質を含む浴槽水でも消毒効果があります。

また、薬湯使用時に色が消えにくくなります。

しかし、モノクロラミン消毒は、イオウ成分の湯では消費されてしまい、強酸性の湯では刺激臭が発生することから、使用が難しくなります。

モノクロラミンは、つくり置きができず、使われる現場で、アルカリ性のもとで2剤の次亜塩素酸ナトリウムとアンモニウム塩を混合してつくられます。

モノクロラミン生成装置を設置する場合と、現場で上記の2剤を手作業で混合する場合の、ふた通りのやり方があります。

浴槽水のレジオネラ属菌対策には、モノクロラミン消毒では3mg/L程度の濃度が有効とされています。

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【モノクロラミン消毒の特徴】

管理濃度で、水中での残留性が高いこと。

臭気がほとんどないこと。

皮膚への刺激性が極めて小さいこと。

【モノクロラミン消毒の使用法・効果】

中性~弱アルカリ性で使用するのが基本です。

モノクロラミン3mg/Lのレジオネラ・ニューモフィラに対する殺菌効果は、40℃、pH8.8のとき、10分間程度で十分な効果を見せています。

【手投入時のモノクロラミン調製方法の例】

A剤:アンモニア系(例:塩化アンモニウムか硫酸アンモニウム)

B剤:次亜塩素酸系(例:さらし粉)

方法の例:

水道水5L+A剤(振って溶かす)+B剤→手早く混合して溶解する→浴槽に投入(4mg/L程度)

調製に経験がないと、適切な濃度をつくるのが難しいといわれています。

【機械式のモノクロラミン調製方法の例】

A剤のタンク:次亜塩素酸ナトリウム

B剤のタンク:硫酸アンモニウム

順序は、次のとおりです。

①A剤とB剤、それぞれ薬注ポンプで送る。

②同時に希釈水(地下水等)を薬注ポンプで送る。

③水とA剤、B剤が混合されて、1000mg/L以上の高濃度のモノクロラミンができる。

④そのモノクロラミンを循環する湯の配管に注入する。

こうした装置は、ろ過器の近くに置かれています。

【モノクロラミンの濃度測定】

①DPD測定器を用いる場合

結合塩素を中心に測ります。

DPD試薬+ヨウ化カリウム=総塩素(結合塩素+遊離塩素)

通常の測定器は2mg/Lが上限となります。

DPD測定器の詳細は、『レジオネラ症対策のてびき』中臣昌広著、倉文明監修(一般財団法人日本環境衛生センター)P16にあります。

②市販の測定器を用いる場合

3mg/L以上を測るときは、高濃度測定可能な市販の残留塩素測定器を使うのが現実的な方法です。

高濃度の総塩素濃度を測ることができるので、試験の水を希釈する必要がありません。

測定器の価格は、一例では約14万円です。

【モノクロラミン消毒の導入まで】

①実験室的な確認

一例では、ビーカー中の対象の温泉水にモノクロラミンを入れ、時間経過とともに消費がされず、濃度が安定的に存在するならば有効と考えられます。

②現場での確認

具体的な一例は、手作業によりバケツでモノクロラミンをつくり、ヘアキャッチャーに入れて、時間経過とともに濃度が安定的に存在するかを確認します。

【モノクロラミン消毒のコスト】

・機械設置費用:100万円以上と考えられます。

・ランニングコスト:次亜塩素酸ナトリウムの2~3倍の経費と考えられます。

【モノクロラミン消毒のデメリット】

①使用3週目以降、従属栄養細菌が増えることがあります。

この対応は検討がされているところです。

②生菌不検出で、迅速法(LAMP法)で陽性のことがあります。

遺伝子構造を分解する力が、次亜塩素酸ナトリウムより弱いことが考えられます。

次亜塩素酸ナトリウムは、遺伝子構造を分解する力をもっています。

そのため、迅速法で不検出の確率が高まります。

モノクロラミン消毒の場合、次亜塩素酸ナトリウム消毒と同様に、週1回の高濃度塩素消毒、年に1回程度の配管洗浄は必要です。

【モノクロラミン消毒と他塩素消毒剤併用の注意点】

モノクロラミン消毒と次亜塩素酸ナトリウム等との併用をする場合、モノクロラミンがジクロロアミンへ変化し、強い臭気が出る可能性があります。

モノクロラミン消毒へ変更を検討する前に、次亜塩素酸ナトリウムの十分な量の添加を検討するのが現場での選択肢になると思います。

【環監の視点】

モノクロラミン消毒のメリット・デメリットを押さえることが大切です。

メリットは、中性~弱アルカリ性で有効なこと、管理濃度で水中での残留性が高いこと、臭気がほとんどないことなどがあります。

デメリットは、従属栄養細菌が増えること、水質検査のとき生菌不検出で迅速法(LAMP法)陽性があることです。

遺伝子構造を分解する力が、次亜塩素酸ナトリウムより弱いことが考えられます。

なお、モノクロラミン消毒の場合も、週1回の高濃度塩素消毒、年に1回程度の配管洗浄等の衛生管理は必要です。

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【実績】

・2022年、厚生労働省のレジオネラ対策のページに掲載される「入浴施設の衛生管理の手引き(令和4年5月13日)」の作成ワーキンググループのメンバーに、国立感染症研究所・倉文明先生らと共になっています。

・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度・環境衛生監視指導研修で「環境衛生監視指導の実際、公衆浴場のレジオネラ症対策」(オンライン)の講師をつとめました。

・2021年、高知県、令和3年度入浴施設におけるレジオネラ属菌汚染防止対策講習会・環境衛生監視員を対象とした現場研修会「循環式浴槽立入検査の実際について」の講師をつとめました。

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