【環監・保健師入門】病院施設とレジオネラ症対策・冷却塔

【環監の視点】
行政の病院への医療監視の場面で、建築物衛生法のビル衛生検査の知識・スキルを持ち、レジオネラ症対策の視点を有する環監の協力が欠かせないと考えます。

建築物衛生法に基づく空気環境測定の器材(イメージ写真)

こんにちは。元文京区文京保健所・環境衛生監視員で、レジオネラ症対策・避難所衛生対策の研修講師をしている「オフィス環監未来塾」中臣昌広です。

2023(令和5)年9月下旬、私が企画構成しました、第10回保健所環境衛生監視員講座(主催:一般財団法人日本環境衛生センター、半日オンライン)が開催されました。

全国・保健所環境衛生監視員62名のかたが参加されました。

テーマは、「公衆浴場等のレジオネラ症対策」です。

講義のなかで私が注目したのは、「病院レジオネラ症防止対策指針」(神奈川県生活衛生部生活衛生課 関戸沙織氏)です。

私が指針について理解した内容と、私の経験などを含めてご紹介します。

テーマ別に、「給水系」「冷却塔」「加湿器」を、3回に分けて見てみたいと思います。

今回は、2回目、冷却塔をご紹介します。

【神奈川県の指針】

引用元:神奈川県 病院におけるレジオネラ症防止対策の指針(令和5年3月、発行元:神奈川県健康医療局)

<冷却塔>

冷却塔は、屋上にあり、主に夏季の冷房に使用される冷却水が配管を循環するとき、熱交換されて温まった冷却水の温度を5℃程度下げる装置です。

冷却水の水温は夏期に 25~35℃程度であり、また塔内で有機物質などが濃縮されるため、レジオネラ属菌の増殖に好適な場所となります。

状況により、冷却塔は増殖した菌を空中へ飛散させるため、レジオネラ症防止対策の観点から十分に注意を払う必要があります。

【冷却塔のレジオネラ属菌が増殖しやすい場所】

冷却塔には開放式と密閉式があります。

また、型式では丸形の冷却塔は角形に比べて飛散水量が多いので注意が必要です。

冷却塔のレジオネラ属菌が増殖しやすい場所(出典元:神奈川県 病院におけるレジオネラ症防止対策の指針 P10)

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【冷却塔の衛生管理のポイント】

◎使用中、日常的に行うもの

・ 物理的清掃(毎月1回)を行う。

・ 設備の定期点検(毎月1回)を行う。

・ レジオネラ属菌殺菌剤や水処理剤(スケール防止剤など)を使用する。

・ レジオネラ属菌の検査を行う。

◎運転開始前・長期休止後に行うもの

・ 使用開始・終了時:化学的洗浄(生物膜の除去)を行う。

・ 休止後の再開時:殺菌などの処理をする。

◎冷却塔に供給する水

・ 水道法の水質基準に適合していること。

冷却塔の衛生管理のポイント(出典元:神奈川県 病院におけるレジオネラ症防止対策の指針 P11)

【宮城県の事故事例】

今年、宮城県内の病院の冷却塔が汚染源と考えられるレジオネラ症の集団発生事例がありました。

宮城県の集団発生事例は、次のリンク先に資料があります。URLをコピーしてご確認ください。
https://www.pref.miyagi.jp/documents/48529/legionnaire_03_20230911.pdf

【東京都の冷却塔の維持管理】

東京都健康安全研究センターのホームページでは、こう説明されています。

①使用期間中はレジオネラ属菌の増殖を抑えるため、殺菌剤等を継続的に添加する。

②月1回程度、冷却塔の点検、清掃を行う。

③冷却塔の使用開始時及び終了時には、冷却水管も含めて殺菌剤を用いた化学的洗浄を行う。

④定期的にレジオネラ属菌検査を行う。

なお、エアロゾルを直接吸引する可能性が低い場合、100 CFU/100mL 以上検出された場合は直ちに清掃、消毒等の対応を行い、実施後は、検出限界(10CFU/100mL)以下であることを確認するとされています。

ちなみに、宮城県の病院の冷却塔採水検体からは、 9,700 万 CFU/100ml が検出されました。

【環監の視点】

宮城県の事例から、冷却塔のリスクを再認識させられました。

問題は、建築物衛生法の特定用途に該当しない病院施設や、床面積が3,000m2未満で特定建築物に該当しない施設が多くあることです。

特に、病院では、免疫力の下がった患者や通院者の存在があり、レジオネラ属菌がエアロゾルで舞う状況が生じれば、より感染リスクが高くなる可能性があります。

行政の病院への医療監視の場面で、建築物衛生法のビル衛生検査の知識・スキルを持ち、レジオネラ症対策の視点を有する環監の協力が欠かせないと考えます。

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【実績】

・2022年、厚生労働省のレジオネラ対策のページに掲載される「入浴施設の衛生管理の手引き(令和4年5月13日)」の作成ワーキンググループのメンバーに、国立感染症研究所・倉文明先生らと共になっています。

・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度・環境衛生監視指導研修で「環境衛生監視指導の実際、公衆浴場のレジオネラ症対策」(オンライン)の講師をつとめました。

・2021年、高知県、令和3年度入浴施設におけるレジオネラ属菌汚染防止対策講習会・環境衛生監視員を対象とした現場研修会「循環式浴槽立入検査の実際について」の講師をつとめました。

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